「日本の理科教育の課題」 理科教育支援センター長 有馬朗人(元文部大臣)

日本の科学教育の課題は、第一に日本社会における科学、第二に日本の子どもたちの学力、第三に、日本の子どもたちの学習意欲である。
日本社会における科学については、子どもたちの学力が日本では問題になっているが、私は大人の科学知識、大人の学力が問題なのだと言いたい。OECDが実施した1991年(平成3年)、2001年(平成13年)のテスト(科学技術政策研究所研)で、2回とも、日本の大人の科学技術に関する知識は13番目であった。しかも、EU諸国の平均値よりも低いというのは生涯学習に問題があるのではないか。また、文部科学省の調査では、小学生・中学生は理科が教科の中でいちばん好きだが、高等学校のころから科学への興味が落ちて、大人、特に30歳未満、30歳前後の人の科学技術への関心が非常に低くなっている。『理系白書』によれば、文系のほうが理系出身者より一生の待遇が良い事が指摘されており、各国の上場企業会社の社長の出身分野を見ても、日本は理工系出身者の割合が低い。理系はオタクと言われて、暗い人間だというように世の中で言わることもある。博士の就職が非常に難しい。女性研究者がなかなか優遇されない。このような問題があるというところに日本の科学技術の問題がある。生まれつき理科や技術の好きな人は待遇が悪くても理科をやるが、一般の方々に科学や技術をぜひ理解していただきたい、科学や技術を勧めていただきたいというときには、理系の待遇は良いということを見せなければいけない。私は、科学技術を勧めようと思ったら、科学者や技術者そして、理系出身者の待遇をもう少し良くしていただきたいということを強調したい。
次に、日本の子どもたちの学力問題。義務教育の日本語、算数・数学の学力は長期的に見ると向上する傾向が見られる。これは、高等学校への進学率の上昇に連動しており、進学率は、大量生産型の経済力の高度成長と相関していると考えられる。日本が直面している問題は、大量生産型から知的基盤の社会への変換期に当たる教育の方法における混乱である。今までの知識記憶型の教育の優れた面と応用力・創造力を育てるという新しい面とを両方育てていくことこそ今後の重要な教育方法ではないかと思う。
日本の教育で私がいちばん心配していることは学力の問題ではなく、体力・運動力の低下、将来への希望、志の低さである。健康な精神には健康な体にこそ宿るので、のびのびと運動して運動力を向上してほしい。志の低さ、学ぶことへの意欲の低さの問題を克服し積極的を強めるため、現行指導要領でも、次期の学習指導要領でも、生きる力を教育のひとつの目的にしている。生きる力とは、第一に自分で課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、より良く問題を解決する資質や素質能力であり、第二に、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心等、ゆたかな人間性ということである。科学教育のうえでも、なぜ、理科を勉強するのか、何が課題か、どう解決するかというような力を育てないといけない。これを教育現場でどのように実行していくか、実現していくかを、今度、多いに工夫していかなければならない。生きる力の提案は、大量生産型社会における教育から知的基盤の社会、イノベイティブな社会における教育への転換のひとつの方法であると私は考えている。
最後に、日本の理科教育の課題について第一に、理工系キャリアに対する社会的な価値意識や待遇を向上させること。第二に、すべての人が生涯にわたって活用できる思考力・判断力・表現力と、その基礎となる科学的知識と態度を育むこと。第三に、科学への学習意欲が高まるような理科教育を目指すこと。また、そのような理科を教える教員の養成と研修を重視すること。第四に、理科教育は批判ばかりされて元気がなくなってきているので、子どもたちも、先生も、優れた人々、良いことに対しては社会がもっと褒め、元気づけなければならない。第五に、平均的学力の向上と独創力・創造力の向上の両方をやれないだろうか。第六に、学力にしても、教育方法にしても、きちっとした客観的調査を行って議論すべきである。
日本社会における科学については、子どもたちの学力が日本では問題になっているが、私は大人の科学知識、大人の学力が問題なのだと言いたい。OECDが実施した1991年(平成3年)、2001年(平成13年)のテスト(科学技術政策研究所研)で、2回とも、日本の大人の科学技術に関する知識は13番目であった。しかも、EU諸国の平均値よりも低いというのは生涯学習に問題があるのではないか。また、文部科学省の調査では、小学生・中学生は理科が教科の中でいちばん好きだが、高等学校のころから科学への興味が落ちて、大人、特に30歳未満、30歳前後の人の科学技術への関心が非常に低くなっている。『理系白書』によれば、文系のほうが理系出身者より一生の待遇が良い事が指摘されており、各国の上場企業会社の社長の出身分野を見ても、日本は理工系出身者の割合が低い。理系はオタクと言われて、暗い人間だというように世の中で言わることもある。博士の就職が非常に難しい。女性研究者がなかなか優遇されない。このような問題があるというところに日本の科学技術の問題がある。生まれつき理科や技術の好きな人は待遇が悪くても理科をやるが、一般の方々に科学や技術をぜひ理解していただきたい、科学や技術を勧めていただきたいというときには、理系の待遇は良いということを見せなければいけない。私は、科学技術を勧めようと思ったら、科学者や技術者そして、理系出身者の待遇をもう少し良くしていただきたいということを強調したい。
次に、日本の子どもたちの学力問題。義務教育の日本語、算数・数学の学力は長期的に見ると向上する傾向が見られる。これは、高等学校への進学率の上昇に連動しており、進学率は、大量生産型の経済力の高度成長と相関していると考えられる。日本が直面している問題は、大量生産型から知的基盤の社会への変換期に当たる教育の方法における混乱である。今までの知識記憶型の教育の優れた面と応用力・創造力を育てるという新しい面とを両方育てていくことこそ今後の重要な教育方法ではないかと思う。
日本の教育で私がいちばん心配していることは学力の問題ではなく、体力・運動力の低下、将来への希望、志の低さである。健康な精神には健康な体にこそ宿るので、のびのびと運動して運動力を向上してほしい。志の低さ、学ぶことへの意欲の低さの問題を克服し積極的を強めるため、現行指導要領でも、次期の学習指導要領でも、生きる力を教育のひとつの目的にしている。生きる力とは、第一に自分で課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、より良く問題を解決する資質や素質能力であり、第二に、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心等、ゆたかな人間性ということである。科学教育のうえでも、なぜ、理科を勉強するのか、何が課題か、どう解決するかというような力を育てないといけない。これを教育現場でどのように実行していくか、実現していくかを、今度、多いに工夫していかなければならない。生きる力の提案は、大量生産型社会における教育から知的基盤の社会、イノベイティブな社会における教育への転換のひとつの方法であると私は考えている。
最後に、日本の理科教育の課題について第一に、理工系キャリアに対する社会的な価値意識や待遇を向上させること。第二に、すべての人が生涯にわたって活用できる思考力・判断力・表現力と、その基礎となる科学的知識と態度を育むこと。第三に、科学への学習意欲が高まるような理科教育を目指すこと。また、そのような理科を教える教員の養成と研修を重視すること。第四に、理科教育は批判ばかりされて元気がなくなってきているので、子どもたちも、先生も、優れた人々、良いことに対しては社会がもっと褒め、元気づけなければならない。第五に、平均的学力の向上と独創力・創造力の向上の両方をやれないだろうか。第六に、学力にしても、教育方法にしても、きちっとした客観的調査を行って議論すべきである。
「小学校分科会の審議を終えて」インタビュー
「日本の理科教育への期待」 玉川大学学術研究所教授 山極 隆

理科教育支援センターの発足にあたって、「理科教育支援検討タスクフォース」でさまざまな課題が話し合われましたが、特に急務なのが小学校の理科教育の改善であるということで一致しました。そこで、小学校分科会が発足し、私が主査として参加しました。
小学校分科会では、毎回時間が足りないくらい活発な議論が行われました。その結果としてまとめられたのが、今回の「学校と社会が一体となって小学校理科教育の新たな展開を」という報告書です。報告書では、現状の把握、現状をもたらした要因、解決するための戦略は何か、その中でJSTができることは何か、ということが書かれています。
現状の問題として、子どもをとりまく理科教育環境があります。小学校教員は文系出身者が多く、全体の6割以上が理科の授業を苦手にしているなど、理科の指導力不足が指摘されています。そして、教員は様々な教育問題をかかえているため多忙で、じゅうぶんな授業の準備をする時間もありません。準備に時間のかかる実験などが満足にできない状況にあります。指導力を向上させるために研修会に参加する時間もありません。
こうした現状に対して、報告書では多くの提言を行っています。最も大きな提言としては、コアスクールの創設が挙げられます。コアスクールは、地域の理科教育の拠点として、教員研修会を行ったり、地域理科教材の開発を行ったり、学校と地域の大学・科学館との連携をすすめたりすることなどを役割として考えています。
JSTには提言内容の実行にあたっての支援を求めています。また、今回の報告書を多くの人に読んでもらう機会を作り、理科教育について自分たちが子どもたちのためにできることは何なのか、それぞれで考えてもらえるようにすることも、JSTの役割だと思います。
子どもの理科離れといいますが、子どもが理科嫌いになっているとか、理科の成績が昔に比べてひどく下がっているということはありません。ある調査では、理科は小学生の好きな教科の上位に挙げられており、2006年のPISA調査(OECD生徒の学習到達度調査)では、理科は参加国中6位で、国語や算数に比べて授業時間が少ないながら検討していると言ってもいい。しかし、理科が生活に必要と思うか、将来科学に関する仕事に就きたいと思うかという問いになると、数字が下がる傾向にあります。科学の身の回りの自然にふれて感動する経験が少なくなり、科学が発達しすぎて、電化製品の中身ですらブラックボックスとなってしまっている現代は、理科が子どもたちの生活と離れたものになってしまっているようです。そのため、将来のために理科を勉強するというような意欲がとぼしくなっているのかもしれません。今回の報告書をきっかけに、理科を学習するのはすばらしいことだということを、社会全体で盛り上げていけるといいですね。
小学校分科会では、毎回時間が足りないくらい活発な議論が行われました。その結果としてまとめられたのが、今回の「学校と社会が一体となって小学校理科教育の新たな展開を」という報告書です。報告書では、現状の把握、現状をもたらした要因、解決するための戦略は何か、その中でJSTができることは何か、ということが書かれています。
現状の問題として、子どもをとりまく理科教育環境があります。小学校教員は文系出身者が多く、全体の6割以上が理科の授業を苦手にしているなど、理科の指導力不足が指摘されています。そして、教員は様々な教育問題をかかえているため多忙で、じゅうぶんな授業の準備をする時間もありません。準備に時間のかかる実験などが満足にできない状況にあります。指導力を向上させるために研修会に参加する時間もありません。
こうした現状に対して、報告書では多くの提言を行っています。最も大きな提言としては、コアスクールの創設が挙げられます。コアスクールは、地域の理科教育の拠点として、教員研修会を行ったり、地域理科教材の開発を行ったり、学校と地域の大学・科学館との連携をすすめたりすることなどを役割として考えています。
JSTには提言内容の実行にあたっての支援を求めています。また、今回の報告書を多くの人に読んでもらう機会を作り、理科教育について自分たちが子どもたちのためにできることは何なのか、それぞれで考えてもらえるようにすることも、JSTの役割だと思います。
子どもの理科離れといいますが、子どもが理科嫌いになっているとか、理科の成績が昔に比べてひどく下がっているということはありません。ある調査では、理科は小学生の好きな教科の上位に挙げられており、2006年のPISA調査(OECD生徒の学習到達度調査)では、理科は参加国中6位で、国語や算数に比べて授業時間が少ないながら検討していると言ってもいい。しかし、理科が生活に必要と思うか、将来科学に関する仕事に就きたいと思うかという問いになると、数字が下がる傾向にあります。科学の身の回りの自然にふれて感動する経験が少なくなり、科学が発達しすぎて、電化製品の中身ですらブラックボックスとなってしまっている現代は、理科が子どもたちの生活と離れたものになってしまっているようです。そのため、将来のために理科を勉強するというような意欲がとぼしくなっているのかもしれません。今回の報告書をきっかけに、理科を学習するのはすばらしいことだということを、社会全体で盛り上げていけるといいですね。



